臨床研究に関する情報公開 「クローン病に対する糞便腸内細菌移植の有用性に関する検討」 問い合わせ先 520-2192 大津市瀬田月輪町 TEL: 077-548-2544 imaeda@belle.shiga-med.ac.jp

「クローン病に対する糞便腸内細菌移植の有用性に関する検討」について (CDFMT UMIN000024633)

 

はじめに 

これは研究への参加についての説明文書です。本研究についてわかりやすく説明しています。

滋賀医科大学では、病気の予防、原因の解明、診断法や治療法の改善などを目的に、いろいろな研究を行っています。その中で、患者さんの協力を得て行う研究を医学系研究と言います。当大学では全ての医学系研究の実施に先立ち、倫理委員会において医学的必要性、研究の倫理面、安全面、妥当性の観点から審査を受け、滋賀医科大学学長の承認を得ています。

 

1.       この臨床研究への参加について

研究対象者として本研究に参加いただける方の主な条件は、以下の基準です。

本研究の対象となる方は、本研究実施期間中に滋賀医科大学附属病院消化器内科に入院あるいは通院され、クローン病と診断された患者さんのうち、以下の条件を全て満たしている方です。

 (1)軽症または中等症のクローン病と診断された方

 (2)年齢が20歳以上65歳未満の方

 (3)CDAI(クローン病疾患活動性インデックス)が450以下の方

 (4)本研究への参加について、ご本人より同意が得られる方

 

また、以下の基準に当てはまる方は、参加いただけません。

(1)重症のクローン病の方

(2)拡張が必要な狭窄や膿瘍および肛門周囲膿瘍など重篤な合併症がある方

(3)活動性のある感染症を発症されている方

(4)提供者(ドナー)の事前検査(スクリーニング)で不適合と判断された方

(5)移植の2週間前に抗生剤を投与された方、また常時投与されている方

 (6)糖尿病や高血圧、高脂血症など他の重篤な合併症を有する方

 (7)妊娠の可能性がある方

 (8)その他担当医師が不適格と判断した方

ご参加いただくために、病状や他の状況等を担当医師が確認をさせていただくことがあります。

 

2.  クローン病について

クローン病などの炎症性腸疾患は、原因が明らかになっていない難治性慢性腸疾患です。なかでも近年、その病因として最も有力とされているのが腸内細菌叢です。クローン病患者の腸内では、腸内細菌叢の異常や乱れが認められ、それによる腸内環境の変化が腸管免疫に影響を与えているとされています。このことより、腸内細菌叢の異常や乱れを是正することを目的とした治療法の開発が進められています。

 

3.  この臨床研究の目的及び意義

炎症性腸疾患患者の腸内細菌叢の乱れを是正する治療法として、近年、糞便中腸内細菌移植法(Fecal Microbiota Transplantation)が注目されています。これまで再発性Clostridium difficile感染症に対する糞便中腸内細菌移植法の有効性は報告されており、その奏効率は98%以上とされています。

潰瘍性大腸炎に対する糞便中腸内細菌移植法のこれまでの報告では、寛解率は全体としては45%ですが、17.4%から60.4%と幅があり、最近の報告では有効性はないとするものが多くなってきています。

クローン病に対する糞便中腸内細菌移植法の有効性に関する報告は少なく、2015年の中等症以上(Harvey-Bradshaw Indexが7以上)の再燃クローン病に対する糞便中腸内細菌移植法の報告では、1か月後の寛解率は86.7%であるとされています。本研究は軽症から中等症に限定し、疾患活動性インデックスに加え内視鏡的にも寛解が得られることを証明することを目的としています。本研究の結果により中等症・重症だけでなく、軽症・中等症のクローン病においても糞便中腸内細菌移植法が有用な治療法として加えることができます。

 

4.  研究の方法について

この研究へは、滋賀医科大学倫理委員会承認日から2018年3月31日にかけてエントリーができます。

この研究へのあなたの参加期間は、前観察期間(スクリーニング検査期間)2~4週間、糞便中腸内細菌移植後観察期間8週間の合計10~12週間です。

この研究に参加していただいている間は、経口・点滴を問わず抗生剤の投与はできません。また、整腸剤(ミヤBM、ラックビー、ビオフェルミン、ビオスリーなど)の追加または減量・中止となった場合は、研究対象から外れることになります。整腸剤以外の内服・点滴・注射やその他の治療が変更となっても、研究対象から外れることはありません。市販薬や他の医療機関から入手した薬が当てはまるかわからない場合には、この研究の医師などに相談してください。

 

1)研究で使用する薬剤と糞便中腸内細菌の移植方法について

この研究では次の薬剤を使用し糞便を調剤します。

生理食塩水(商品名:大塚生食®)    とろみ粉末(商品名:トロメリン®

トロメリンは液体にとろみをつけるためのものです。ともに滅菌された薬品で、経口投与可能なものです。

提供者(ドナー)の方には当日の朝に採便器に200g以上の便を採取していただき、保冷剤の入ったクーラーボックス(ともに事前にお渡します)で内視鏡室に持参していただきます。十分な採便が可能であった場合には提供者(ドナー)は来院する必要はありませんが、不十分であった場合にはともに来院していただきます。

便は生理食塩水で懸濁し、ガーゼでろ過したのち、トロメリンでとろみをつけます。調剤した糞便は、経肛門バルーン小腸内視鏡施行下に、または、小腸二重造影検査用経鼻チューブを通して腸管内へ注入します。

注入後は1時間、左側臥位になっていただきます。また、鎮静下での内視鏡施行希望の場合には、付き添い者が1人以上必要です。鎮静された後は自動車の運転は控えていただくことになりますのでご注意ください。

 

2)提供者(ドナー)の選定と事前検査(スクリーニング)について

 この研究に提供者(ドナー)として参加していただいた場合は、移植の2週間以内は経口・点滴を問わず抗生剤の投与された場合には適合から外れます。また、整腸剤(ミヤBM、ラックビー、ビオフェルミン、ビオスリーなど)の内服をされている場合は、提供者(ドナー)から外れることになります。市販薬や他の医療機関から入手した薬が当てはまるかわからない場合には、この研究の医師などに相談してください。

 

この研究で提供者(ドナー)となることができる方は、以下の通りです。

 (1)研究参加者(レシピエント)から3親等以内の方

 (2)20歳以上65歳までの方

 (3)移植当日に200g以上の糞便を提供していただくことが可能な方

 

また、提供者(ドナー)となることができない方は、以下の通りです。

(1)  高血圧症、糖尿病、高脂血症、アレルギー性疾患で加療中の方

(2)  2週間以内の抗生剤の投与

(3)  便秘症(内服でコントロールされている場合を除く)

(4)  下痢症(連続して2日以上、1日3回以上または48時間で8回以上の軟便あるいは水様便)

(5)  同性愛者

(6)  刺青

(7)  血液検査および便検査にて感染症が認められたとき(既感染を含みます)

 

感染症には下記を含みます。

血液検査: HIV、HTLV-1、梅毒、肝機能障害、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、サイトメガロウイルス、EBウイルス、アメーバ赤痢

便検査  : ヘリコバクター・ピロリ、エルシニア、カンピロバクター、赤痢、サルモネラ、出血性病原性大腸菌、ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、寄生虫スクリーニング、虫卵スクリーニング、クロストリジウム・ディフィシル(CD toxin A/B)

 

ただし、サイトメガロウイルスとEBウイルスでは、提供者(ドナー)も研究参加者(レシピエント)も既感染(活動性感染でなく過去に感染のあった方)であれば移植の適応となります。

 

3)観察項目・検査項目のスケジュール

この試験では以下の診察や検査などを計画しています。

便中腸内細菌移植法の効果を確かめるために、移植ののち4週間後、8週間後と12週間後に採血と診察を行います。また8週間後には経肛門バルーン小腸内視鏡ないしは全大腸内視鏡を行います。

 

スケジュール表

○印は提供者(ドナー)に行う項目、●印は研究参加者(レシピエント)に行う項目

項目

前観察期間

移植

当日

後観察期間

時期

2〜4

週前

0週

移植後

4週目

移植後

8週目

移植後

12週目

受診

受診1

受診2

受診3

受診4

受診5

選択基準・除外基準

●○

 

 

 

 

病歴、生活歴、投薬歴

●○

 

 

 

 

同意取得

●○

 

 

 

 

診察

 

腹部症状の問診

 

血液検査

●○

 

便検査

●○

 

有害事象の観察

 

身長、体重の測定

 

内視鏡検査

 

 

生検組織検査

 

 

 

 

  1. )この研究のために収集する試料やデータ

この研究では、通常の診療よりも検査する項目が増えます。移植前のスクリーニング検査時に合計25mLほどの血液検査が必要です。また、移植後の血液検査は通常の臨床検査と同じ項目(合計13mLほど)ですが、4週目と8週目にも行います。移植前のスクリーニング検査以外の血液検査はこの2回です。

便検査は、移植前のスクリーニング検査で1cm3ほどが1回と、専用のブラシで便を便をこする検査がスクリーニング時に1回と、移植後4週目と8週目の合計3回行います。

 

5.      この研究への予定参加人数について

この研究は、当施設単独によるもので、予定参加人数は研究参加者(レシピエント)40人と提供者(ドナー)40名です。

 

6.      研究参加終了後の治療(対応)について

この研究は、通常の診療に加えて行うものですが、継続して行うものではありません。研究終了後は、通常の治療法に準じた診療となります。

 

7.      予想される利益と不利益

1)予想される利益             

通常のクローン病の治療に加えて、本研究の治療法を併用することによって、効果が高くなることが予想されますが、現時点では十分にわかっておらず、利益/不利益双方の可能性があります。

あなたがこの研究に参加することで、将来のクローン病の患者さんのために、より有効な治療法を確立するための情報が得られ、治療法確立のために社会的な貢献が期待されます。

 

2)予想される不利益

研究参加者(レシピエント)の副作用について 

これまでの糞便中腸内細菌移植法で報告された副作用は、発熱、下痢、便秘、嘔気、血圧上昇があります。また、経口で投与された報告では誤嚥により肺炎をきたしたという報告もあります。

とろみをつける薬剤(コラーゲンの一種)にアレルギーがある方は症状が出現することがあります。

また糞便移植によって、ここに記載した以外にも、副作用は報告されています。副作用に関する最新の情報をお知りになりたいときは、いつでも担当医にお尋ね下さい。また、研究中に体調などが変わったことがありましたら、いつでも担当医師等にお知らせください。

 

研究参加者(レシピエント)の検査に伴った合併症について 

この研究では、経肛門バルーン小腸内視鏡または大腸内視鏡検査を移植時またはその4週間以内と、移植8週後に行っていただきます。それに伴った合併症が起きる可能性があり、一般的には腸管穿孔や粘膜損傷があります。また鎮静剤(ミダゾラム、プロポフォールなど)を使用した場合は、呼吸抑制、血圧低下がおきる可能性があります。

前日21時には、検査前処置としてラキソベロンという薬を1本または2本内服していただきます。一般的な副作用は頻回の下痢による虚血性大腸炎と腸閉塞です。バルーン小腸内視鏡が経口である場合には1泊の入院をしていただくこともありますが、検査翌日には日常の生活が可能になります。

 

提供者(ドナー)の検査に伴った合併症について 

 提供者(ドナー)は採血と便検査のみです。一般的な合併症は採血後の皮下血腫、神経損傷、迷走神経反射、アレルギーなどです。採血量は健康診断等にて実施する場合とほぼおなじであり、重篤な合併症が生じる可能性はないと考えられます。

 

8.      費用負担及び謝礼について

この臨床研究の治療で用いる薬剤や治療・検査は、移植する糞便を除き、全て厚生労働大臣の承認を受けたものであり、保険の適応内で行われる通常の診療の範囲内で行われます。そのため、使用される薬剤、検査はあなたの医療保険(国民健康保険など)が適用されることになり、通常の治療と同様に、自己負担分はあなたのご負担となります。

ただし、提供者(ドナー)の適合スクリーニング検査(血液検査と便検査あわせておよそ5万円)と糞便の調剤費用(およそ2万円)は、全て滋賀医科大学消化器内科学講座の研究費で負担いたします。この研究に参加いただくことで、保険診療費以外、あなたの費用負担が増えることはありません。

 

9.        健康被害の補償について

あなたが、この臨床研究に参加したことによって、万一健康被害が生じた場合には、適切な治療を行います。研究期間中に異常を感じられた場合、どんなことでも結構ですから、医師、看護師などにお伝えください。健康被害が生じた場合は、すぐに適切な対応を開始します。また、必要に応じて健康被害に対して補償があります。

この研究では、研究用に25mlの採血を1回行わせていただきますが、この採血は日常的に行われている採血と全く同じ方法で行われるものですので、これにより大きな健康被害が生じる可能性は低いと考えております。

万一何か気になる症状が現れましたら、どのようなことでも遠慮なくご連絡ください。症状に応じて適切な対応をします。検査や治療などが必要となった場合の費用は、通常の診療と同様に医療保険(国民健康保険など)を適用して、自己負担分をお支払いいただくことになります。

 

10.   この研究に関する情報の提供と研究に関する資料の閲覧について

この研究に関する情報の提供について

本臨床研究に参加されている期間中、あなたの研究参加の継続の意思に影響を与えるような情報を新たに入手した場合は、直ちにお知らせいたします。また、この研究に関して重要な情報が得られた場合は、研究参加の継続に関してもう一度あなたの意思を確認します。

あなたが研究の計画や方法についてさらに詳細な資料をみたいと思われた場合には、担当医師等にご相談ください。他の患者さんの個人情報が保護され、この研究の独創性が保たれる範囲内で開示させていただきます。

 

11.  研究への参加を中止する場合について

参加の同意をいただいた後でも、次のような場合には、研究を中止または研究に参加いただけないこともあります。

(1)試験参加の基準に合わないことが分かった場合

(2)あなたが試験参加の中止を申し出た場合

(3)試験全体が中止された場合

(4)整腸剤(ミヤBM、ラックビー、ビオフェルミン、ビオスリーなど)の追加または減量・中止となった場合

(5)抗生剤の投与が必要となった場合(その場合、本研究の対象者から外れることになりますが、それまで得られたデータは使用させていただくことがあります。)

(6)その他、担当医師が試験の継続が好ましくないと判断した場合

 

研究を中止した後も、担当医師が必要であると判断した場合には、あなたの健康状態を追跡調査させていただく場合があります。

研究途中での参加をやめられた場合でも 、それまでに得られた研究のデータは今回の研究に関する貴重な情報となりますので、あなたの個人情報は保護された上で使用させていただきます。

 ただし研究の同意撤回をされた場合は、あなたのデータを使用させていただくことはありません。

 

12.   研究の記録などの第三者による閲覧に関して

患者さんの人権が守られながら、きちんとこの研究が行われているかを確認するために、研究の関係者、倫理審査委員会の委員、国の機関などの関係者があなたの医療記録等を見ることがあります。

しかし、これらの関係者には守秘義務が課せられていますので,あなたの名前などのプライバシーにかかわる情報は守られます。

 

13.   個人情報の取扱いについて

この研究で得られたあなたデータは、医学雑誌などに公表されることがありますが、あなたの名前などの個人的情報は一切わからないようにするため、プライバシーは守られます。

ご提供いただきました研究データや診療記録から収集させていただいた情報については、これらからあなたを特定できる情報(氏名、生年月日、住所等)を全て除き、代わりに本研究用の登録番号を付けることでその便サンプルや情報が誰のものであるか分からない状態にします。

ただし、必要な場合に個人を識別できるように、あなたと登録番号を結び付けることができる対応表を作成し、残しておきます。(これを「連結可能匿名化」といいます。)この対応表は滋賀医科大学消化器内科学講座の研究室の金庫で厳重に管理します。このように、あなたの個人情報の保護については、十分な注意が払われます。

この研究で得られたあなたの試料(便および便中DNA)や情報は、本研究終了後までに、滋賀医科大学消化器内科学講座の鍵がかかる冷凍庫に保存します。

 

14.   試料・情報の保存と廃棄の方法

この研究で得られたあなたの資料やデータは、少なくともこの研究結果の最終公表から10年まで保存します。データ等を保存および廃棄する場合に、個人情報の保護に十分配慮します。また、あなたからご提供いただきました血液などの試料は、あなたの個人情報の保護については十分注意を払って保存、廃棄させていただきます。

 

15.   研究の資金と研究結果の取り扱い

1) 研究の資金について

この研究は、滋賀医科大学消化器内科学講座の委任研究費を用いて行います。

 

  2)研究資金の提供者等とこの研究の関わり

該当ありません。

 

3)研究結果の帰属

この研究によって、将来、特許権等の知的財産権が生じる可能性があります。この研究の結果は、滋賀医科大学が所有することをご了承ください。

 

17.この研究に参加している間のお願い

研究期間中にクローン病治療薬を含む内服薬が変更になった場合は、申し出てください。抗生剤を内服された場合や整腸剤が新たに加わったまたは削除された場合は、その時点から研究対象から外れることになります。

 

18.研究担当者と連絡先(相談窓口)

  1. 研究担当者:滋賀医科大学医学部消化器内科  安藤 朗
  1. 相談窓口担当者:滋賀医科大学医学部消化器内科  今枝 広丞

   連絡先:住所:〒520-2192 大津市瀬田月輪町

電話:(外来)077-548-2544  (講座)077-548-2217

E-mail:imaeda@belle.shiga-med.ac.jp