臨床 消化器内科

1.消化器内科診療実績

  • 平成26年度の炎症性腸疾患の診療実績は潰瘍性大腸炎470例、クローン病200例であり、入院加療は年間91例に行っていました。その約半分を紹介患者が占めています。新しい治療法も積極的に紹介・導入しています。
  • 消化管内視鏡検査・治療は年間6500件実施しています。早期胃癌、早期食道癌に対する内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)を積極的に行っています。ESD件数は年間約120例を数えています。また、大腸癌、大腸ポリープなどの内視鏡下治療(EMR・polypectomy)件数は年間300例を越えます。
  • 肝疾患診療では滋賀県肝疾患診療連携拠点病院の指定を受け、慢性C型・B型肝炎に対する核酸アナログ製剤療法、肝臓癌の集学的治療、肝硬変の栄養療法などを病診連携で行っています。
  • 2014年1年間の入院はのべ1145件であり、その内訳は食道腫瘍・狭窄病変49例(うちESD10例)、胃癌・胃リンパ腫など胃・十二指腸腫瘍137例(うちESD70例)、食道静脈瘤・胃潰瘍・十二指腸潰瘍など52例。炎症性腸疾患92例、虚血性腸炎・感染性腸炎16例、憩室炎・出血40例、大腸ポリープ・大腸癌など大腸腫瘍367例(うちEMR 310例、ESD40例)、腸閉塞が23例、肝障害・慢性肝炎・肝硬変86例、原発性肝癌など肝腫瘍96例。胆嚢・胆管腫瘍12例、胆石症・胆管炎61例。膵腫瘍35例、慢性膵炎・急性膵炎12例、その他66例でした。

2.特徴ある診療技術とその実績

臨床的にとくに以下の点に着目してとり組んでいます。

  • ・炎症性腸疾患は年々増加する一途にあり、重症度・難治度も高いことから、病態の解明、診断、治療各方面からのアプローチを試みています。発症関連遺伝子の同定と粘膜免疫調節機構に根ざした新規治療法の開発を行っております。また、新しい治療法をいち早く患者さんに提供するとともに、薬剤の臨床治験にも積極的に取り組んでいます。
  • ・肝癌に対してはラジオ波凝固術、MRIガイド下マイクロ波凝固術、肝動脈塞栓化学療法などを放射線科、消化器外科と連携のうえで行っております。また、肝硬変症例の栄養療法は、栄養士をまじえた栄養評価に始まり、基礎代謝の測定値や実測データをもとに、症例個別の栄養療法を実施しています。劇症肝炎の治療も集中治療部と連携する中で積極的に受け入れています。
  • ・重症急性膵炎の集学的治療にも積極的に取り組んでおり、持続動注療法や血液浄化療法を早期から取り入れ重症化を未然に防いでいます。
  • ・生活習慣病と消化器疾患、動脈硬化と虚血性消化器疾患など、これまで検討されていなかった分野からのアプローチも近年注目しています。
  • 【小腸内視鏡検査】 カプセル内視鏡(ギブン・オリンパス)を導入し、既に実績を積んでいるシングルバルーン小腸内視鏡を組み合わせての、小腸疾患の診断・内視鏡下治療を行っています。

3.先進的医療の取り組み

倫理委員会承認済・提出中のものは、・固形癌に対する造血幹細胞ミニ移植・重症潰瘍性大腸炎に対するシクロスポリン療法・潰瘍性大腸炎疾患感受性遺伝子検査・潰瘍性大腸炎腸内細菌遺伝子(tRFLP)解析・体質性黄疸の遺伝子解析などがあります。

4.外来診療担当医

 
消化器内科1 稲富 園田 杉本 安藤 馬場
消化器内科2 大崎 藤本 馬場 大崎 杉本
消化器内科3 西田 佐々木 稲富 安藤
新患 稲富 園田 杉本 安藤 馬場

「炎症性腸疾患センター」外来担当医

 

炎症性腸疾患センター

(完全予約制)

   西田 佐々木
(栄養サポート外来)
安藤 馬場

※診察は全て午後からとなります。

詳しくは以下の連絡先よりお確かめください。

連絡先

5.入院診療の紹介

入院の担当医は医員・助手以上の医師と研修医の2名もしくは3名でおこないます。診断・治療方針については頻回に患者さん・御家族と面談し適切な方法を選択するよう心がけるとともに、教授回診・症例検討会で診断・治療方針について討論しています。また、患者さんの社会的背景を尊重し、予め入院期間を予想し、おおまかな検査・治療スケジュールを説明するよう心がけています。特に内視鏡的大腸ポリープ切除やERCPに関してはクリニカルパスを導入し、入院期間や時間スケジュールをわかりやすくしています。

6.教育認定施設の取得

  • 日本内科学会教育認定施設
  • 日本消化器病学会教育認定施設
  • 日本消化器内視鏡学会教育認定施設

7.研修医教育

消化器内科は内視鏡診断・処置、超音波診断・処置的治療、X線検査・診断、血液浄化療法など診療実技が最も多い診療科であり、研修医の実技指導も重要であるとのスタンスで診療にあたっています。臨床研修2年間でひととおりの診断技術・治療法を習得できるようにディスカッションの場を多く設け、適切なアドバイスを行っています。

研修医の先生のデューティーは他科に比較して多いですが、これも実践指導の一環と考えています。また、上級医を固定せず、研修医に対して複数の上級医(診療グループ制)が指導するようにしています。これは、幅広い分野を担当することで視野を広げようとする目的に沿ったものです。

炎症性腸疾患(IBD)センター

抗インフリキシマブ抗体測定法の開発と治療への応用

潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患は、再燃・寛解を繰り返すために、長い間、難治性慢性疾患とされてきました。しかし今からちょうど10年前に、クローン病に対して抗腫瘍壊死因子抗体製剤(抗TNF-α抗体製剤インフリキシマブ(レミケード®))が保険適応となり、治療経過は一変、長期間寛解を維持できるようになりました。さらに2009年にはインフリキシマブが潰瘍性大腸炎にも適応となり、2010年には患者さん自身で皮下注射できる抗TNF-α抗体製剤アダリムマブ(ヒュミラ®)がクローン病に保険適応となり、様々な治療法の選択枝が増えることとなりました。

当院でも年々、抗TNF-α抗体製剤を使用する患者さんが増えています。しかし抗TNF-α抗体製剤を長期使用すると次第に効果が減弱する人がいることが明らかとなってきました。さらに私たちは、その効果減弱が患者さんに抗TNF-α抗体製剤の効果を中和するような免疫ができてしまうことによるものであることを明らかにしました。抗TNF-α抗体製剤を中和するような免疫(抗生物学的製剤抗体=抗インフリキシマブ抗体(ATI)・抗アダリムマブ抗体(ATA))ができてしまった患者さんは、抗TNF-α抗体製剤の血中濃度が十分に上昇しないため、投与日が近づいてくると少しづつ調子が悪くなってきます。現在私たちは、インフリキシマブやアダリムマブの効果が減弱した患者さんにはこの抗TNF-α抗体製剤の血中濃度と抗生物学的製剤抗体製剤濃度の測定をおこない、別の抗TNF-α抗体製剤へ切り替えるかどうかの判断をしつつ治療にあたっています。

免疫調節剤の遺伝子多型にもとづく投与量設定による個別化治療

潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の薬のなかにアザチオプリン(アザニン®、イムラン®)という免疫調節剤があります。このお薬は効きすぎると白血球が減少してしまうことがありますので、定期的な採血をしてチェックする必要があります。このお薬が効きすぎる人は、何種類かの遺伝子配列(MRP4, TPMP, ITPAなど)に影響されると考えられており、日本人は約4割の人がこれに相当します。最近、このNUDT15という遺伝子の多型が白血球減少に非常に強い影響を与えることが報告されており、当院でもこの遺伝子の検索を行うことで、患者様にあった投与薬剤の検討を行っております。これらの遺伝子配列を持っている人の全員が必ずしも効きすぎるわけではありませんが、定期的な採血の必要性がさらに重要になっています。 現在、私たちは希望された患者さんにはこのお薬を投与する前に、あらかじめこれらの遺伝子配列をお調べして、発熱や下痢といった感染兆候に十分注意していただくようにご説明しています。さらには、通常より採血の回数を多く設定し、治療にあたっています。

新しい炎症性腸疾患活動度マーカー ―便中カルプロテクチン・便中キチナーゼ3L1―

潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の日常診療において、現在、最も患者さんの状態を把握するのに有効な検査は大腸カメラや小腸内視鏡です。しかし、そう頻回にできる検査ではありませんので、しかたなくCRPやアルブミン、ヘモグロビン、赤血球沈降速度(赤沈)といった血液検査で活動度を判定しています。そのような中、最近になって便中のカルプロテクチン濃度が炎症性腸疾患の内視鏡的活動度および組織学的活動度と強く相関することが明らかになっています。さらに、当科では便中キチナーゼ3L1濃度が同様に炎症性腸疾患の活動度の新たな指標になることを見いだしています。

後方視的研究

消化器内科では以下のような後方視的研究を実施しています。調査研究であり直接の御同意は頂かずに、この掲示などによるお知らせをもってご同意いただいたものとして実施されます。下記の研究にご参加を希望されない場合は各説明文に記載の問い合わせ先にお知らせいただければと存じます。